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画家・アーティストというお仕事
Q1. 画家やアーティストって
どんな職業?
アーティストは「自己表現を仕事にしている人」だと私は考えています。そのなかでも、絵で自己表現をするのが画家です。
私にとっての自己表現は絵ですが、音楽や作詞も自己表現のひとつですよね。自己表現というくくりだと、起業家もアーティストだと思います。
Q2. アーティストって
どうやってお金を稼ぐの?
大きく分けて3つの方法があります。自分で作品を販売する方法、画廊と契約を結ぶ方法、さらに企業や個人のクライアントさんから依頼されて作品を作る方法です。
自分で作品を販売する場合は、場所を借りて個展を開催したり、SNSを通じて作品を購入してもらったりします。
画廊とは、芸能界でいうところの事務所のような存在です。画家と話し合って企画展を開催したり、所属しているアーティストを集めてグループ展を開催したりとプロデュースしてくれるんです。
基本はキャンバスのサイズ(号)単位ごとに画廊と相談して値段を決めていきます。絵が売れたら、その売値から画廊に入る手数料を引いた額が収入になります。ちなみに手数料は60%くらいで、それがプロデュース料のような感じです。
クライアントさんからの依頼では、ご要望いただいた絵を描いて報酬をいただきます。
「エコアーティスト」綾海さんの働き方
Q3. 綾海さんの画家としての
初めてのお仕事は?
初めてお仕事をいただいたのは、中学生のころでした。店舗を持っている友人の親御さんが作品をお店に飾りたいと言ってくれて。
プレゼントしようとしたら、「プロなんだからお金を受け取ってください」と言ってくれたんです。その売り上げが画家として初めての収入でした。作品を今でもお店に飾ってくれていて、嬉しいです。
本格的に画家の道を歩み始めてから初めてお金を頂いたのは、ニューヨークでグループ展を開催したときでした。会期中は販売につながらなかったのですが、帰国後に日本人の方が購入してくれたんです。
Q4. 今は画家として
どんな活動をしているの?
廃材を使ってアート作品を作っています。キャンピングカーで日本を回りながら、訪れた地域の方のお話を聞いて、その地域の環境課題をアートで発信しているんです。
たとえば、有明海を訪れたときに出会った漁師さんから「ヘドロを使って作品を作ってほしい」と依頼を受けたことがあります。
有明海に何度も足を運んで、なぜ有明海にヘドロが生まれるのかを漁師さんや専門家に話を聞きました。そこから、どうやったら有明海からヘドロが無くなるのか、どんな海になったらいいのかを考えて、ヘドロを使った作品に落としこんでいきました。
他にも「竹害」という環境問題を題材に、異常に増えてしまった竹を絵具にして100年後の理想の竹林の絵を描いたこともあります。
Q5. 現在は、エコアートを
販売して収入を得ているの?
実は、エコアートの販売は行わないと決めたんです。今は、アートに関わるスキルを教えることで収入を得ています。
地域の方のお話しを多くの人に知ってほしくてエコアート作品を作っているのですが、それを個人に販売してしまうと私が「伝える」ためのツールをなくしてしまう気がして。
最近は、廃材を絵具にする方法や、アーティストへのなり方、デッサンの描き方など私が持っているスキルを教える講師業が増えているところです。
Q6. 綾海さんにとってアーティスト
活動の面白さや大変さとは?
正解も終わりもないことです。自分が信じたものや思想がすべてで、正解を誰かが教えてくれるわけではない。それが面白さでもあり、大変な部分でもありますが…。
自分が信じたものを表現した作品が売れなかったとき、「あぁ、認められていないんだ」「やってて意味があるんだろうか」と孤独と不安を感じることがあります。
逆に、作品を購入してもらえたときやInstagramのフォロワーが増えたときは、それらが成功体験になり、誰かに必要とされているんだと自分を認めてあげられる。その波のなかでアーティストを続けていますね。
Q7. アーティスト活動を続ける原動力は?
絵を描く工程の0から完成までを考えると、つらいことでいっぱいなんです。絵の具がうまく作れないとか、「これ誰が見るんだろう」「誰も見なかったらどうしよう」とか。
それでも、作品を作る過程を俯瞰してみると「楽しい」のひとことなんですよね。全部がマイナスのはずなのに、いつの間にかプラスになっていて、自分でも不思議です。でも、その感覚が楽しくてアーティストを続けています。
つらくても続けたいと思えるアーティストの仕事は、私にとって天職なんです。アーティストを目指す人へ
アーティストを目指す人へ
Q8. どうすればアーティストに
なれますか?
美術大学を卒業した方がいい?
Q9. 画家に必要なスキルや考え方は?
美大(美術大学)を卒業しているかは関係ないです。もちろん、美大で学べることもたくさんあると思いますが、美大卒じゃなくても大丈夫。私も美大には通ってないです。
今は、Instagramなど自分自身で情報発信できる時代なので、作品もとにかく発表し続けることが大切です。
Q10. 画家に必要なスキルや考え方は?
苦手なことを「自分にはできない」と決めつけずに、視野を広げることが必要です。
「コミュニケーションが苦手」「文章を書くのが苦手」「SNSが苦手」、そう思い込んでしまったらそこまでだと思うんです。苦手を苦手と決めつけずに、アーティストを続けるための方法を自分で見つけることが大切。
私自身も、過去に美大を卒業していない人は大手ギャラリーでの展示は難しいと言われたことがあります。なんで美大卒でないと大手ギャラリーでは展示できないのか、言われたことをそのまま納得せずに、何度も何度も考えて視野を広げました。
私の場合は大手ギャラリーでの展示に固執せず、エコアートを作り続けることに決めました。苦手なことや置かれた状況に挫けることなく、どうやって前進していくかを考えられるかが、アーティストに限らずどんな職種にも必要なスキルだと思います。
Q11. 綾海さんはどうやって
仕事をつくったの?
画家活動を始めたころに、「なんで画家だけで食べていけないんだろう?」「誰が“いい絵”を決めているんだろう?」と疑問に思ったことがありました。
アート業界について調べていくうちに「生活や社会が豊かじゃないとアートに関心が向かないのでは?」という考えにたどり着いたんです。
だから、私は社会を豊かにするために、社会課題とアートを結びつけることにしました。結果として、作品がもつビジュアルの良し悪しだけではなく、私の活動自体や想いそのものを買ってくれる人が多いですね。
ただ、社会に目を向けすぎると、自分が求めている自己表現ができなくなってしまうのも事実。そのバランスをアーティスト一人ひとりが見つけていく必要があると思います。
Q12. どんな本、どんなサイトが
おすすめ?
「アート作品を見れば時代背景がわかる」と言われているので、何が評価されているのか、どういう時代が来ているのか、今売れている作家さんを知ることも大切です。
今売れているアートを知るには、『美術手帳』や『アートコレクターズ』などの雑誌がおすすめです!私も毎回欠かさずチェックしています。
メッセージ
自信を持って悩んでいいんだよと伝えたいです。
この記事を読んでくれている方は、きっと悩んでいることがあるんだと思います。けれど私は、悩むことは正しいことだと思うんです。
絵を描くのが好きなのであれば、商業的に描きたいのか、画家をやめて趣味的に描くのか、そもそも自分はどんな絵を描きたいのか、とことん悩んで考えて自己分析しましょう。
そうやって考えながらも続ける人が、アーティストになれるんだと思います。