薬剤師からWebライターへ。資格を強みにした「医療職のセカンドキャリア」の築き方

薬剤師からWebライターへ。資格を強みにした「医療職のセカンドキャリア」の築き方

フリーランスのストーリー

医療系の大学を卒業し、資格を取って、憧れだった医療の道に進んだけれど。

過酷な勤務が続き、これから先もずっとやっていけるのかと心配になったり、身体や心が追いつかなくなってしまう人も多いのが医療現場の現実。

一方で、専門性を必要とする医療業界にいればいるほど、他業種やフリーランスなど、新しい道へと一歩踏み出すのが怖いという人も多いのではないでしょうか。

今回インタビューをしたのは、薬剤師での経験を土台に、医療系記事の執筆と、未経験から一歩を踏み出したい医療職を対象にした「医療ライター講座」を運営する、まいまいさん。

薬剤師からライターへ。医療職の新しいセカンドキャリアを歩む、彼女らしい生き方を聞いてみました!

医療・取材ライター/編集者

まいまい

まいまいさん

薬局薬剤師を病気で退職した後、派遣薬剤師として沖縄・北海道・静岡などで働きながら医療ライター・Webデザインのスキルを取得する。その後、キャリアスクールでライティング講師や統括業務を経験。現在は医療・取材ライターとして活動するほか、未経験からの第一歩「医療ライターのはじめかた」オンライン動画講座や医療ライター限定コミュニティ、医療×Webクリエイターチーム「MediWeb」、一歩踏み出したい医療従事者を応援するメディア「Medi Jump」などを運営中。
このインタビューは
\ 音声でも聴けます/
\ このインタビューは音声でも聴けます/

フリーランスになる前

フリーランス_医療・取材ライター2

Q1. フリーランスになる前は
どんな仕事をしていたの?

薬局の薬剤師をしていました。簡単に言うと、薬の管理をするほか、患者さんから処方箋を受け取り、薬の量や飲み合わせなどを確認してから、患者さんに投薬と服薬指導をするというお仕事です。

でも、薬局薬剤師として働いて1年が経ったころ、朝起きたら、顔の左半分がうまく動かせなくなってしまったんです。「中等度以上 左顔面神経麻痺」という病気でした。

職場には休職したいと伝えたのですが、人手が足りないので続けてほしいと言われ、一度は続けることにしました。

けれど、症状が良くならなかったことや、顔の左半分が動いていないにも関わらず「働くのが当たり前」のような職場の雰囲気に違和感を感じ、退職を決めました。

お医者さんからは、ストレスや筋肉がこわばる「寒さ」も顔面神経麻痺の原因の1つになると聞き、ちょうど冬だったので、思いきって沖縄で離島巡りをしたりと1人でゆっくりしながら過ごしていました。

その後「派遣薬剤師」という働き方を知ったのですが、派遣薬剤師の経験もなく怖かったので、最初は少ない日数で始めました。慣れてきてからは、3ヶ月〜半年と期間を長くしていきました。

もともと旅が好きだったので、夏は北海道、冬は沖縄といったように、派遣薬剤師として好きな場所で働きながら、副業でWebライティングとブログ運営を始めたことが今の活動の原点です。

Q2. どうしてフリーランスに
興味を持ったの?

もともと旅が好きで、旅関係のSNSアカウントや、旅をしながら仕事をされている方をフォローしており、「こういう働き方もいいなあ」という憧れをずっと持っていました。

ただ、大学時代は今のような働き方をするとは思っていなくて、ずっと薬局薬剤師をするのだと思っていました。

転機は、沖縄で療養しているときに訪れました。以前から憧れていたトラベルフォトライターの古性のちさんが「なんでも相談にのります」というツイートをしているのを見つけて、30分ほどお話しをする機会をいただきました。

そのときに、「派遣薬剤師になろうと思っているけど、『旅先で働くこと』や『ライティング』にも興味があって…。でも、フリーランスに踏み出すのに戸惑いがあるんです」と相談をさせてもらったんです。

すると、のちさんが、世界一周中に看護師さんや薬剤師さんと多く出会ったという話をしてくれ、「長いブランクがあっても復帰しやすい資格職はすごく強いから、活かしたほうがいいよ!」と言ってくれて。その言葉が後押しになって、踏み出すきっかけになりました。

フリーランスになるために

フリーランス_医療・取材ライター3

Q3. フリーランスになるために
最初に挑戦したことは?

最初は副業として、どこでも働くことのできるブログ運営から始めました。文章を書くことも不慣れだったので、まずは「はてなブログ」を開設して執筆に慣れるところからのスタートでした。

ブログではアフィリエイト記事を書いていたのですが、構成の作り方、記事の書き方なども独学だったので、とても苦手意識を持っていました。

でも、「どうしてもいつか、自分のブログを運営したい!」という想いがあったので、まずはWebライティングの仕事をしながら、記事の書き方や構成作りなどを学ぶことにしました。

Q4. はじめはどうやってライティング
の仕事を見つけたの?

たまたまTwitterで、「沖縄の派遣薬剤師の体験談を書ける人」という募集を見つけて応募したことで、初めてライティングのお仕事をすることになりました。

今でこそ、フォロワーさんも2000人以上いますが、その頃は300人程度だったと思います。内容は、体験談をベースに書くものだったので、私にとってはすごくやりやすかったですね。

Q5. その後はどうやって
仕事を増やしていったの?

クラウドソーシングサイトで案件を探し、仕事を受けることからはじめました。最初は実績もなかったので、ライティングの知識が身につくように、1文字あたり0.01〜0.1円と金額は安くても、勉強しながらやらなきゃといけない、と思い込んでいましたね。

しかし、当時の自分が見つけられたのは納期に対して業務量が多く、「時給で考えたらこの仕事をしつづけられないな…」と思ってしまうような案件ばかりで、なかなかうまく軌道に乗れないことが悩みでした。

Q6. どうやってその悩みを
抜け出したの?

悩んでいたとき、SNSでフォローしていたフリーランスのライターさんやエンジニアさんが、合同でキャリアスクールの講師をすることをたまたま知りました。

ライティングをはじめ、プログラミングやデザインなど、さまざまなスキルを学んで仕事を得られるようになろう、というコンセプトのスクールでした。

ちょうど派遣薬剤師としての契約が切れるタイミングだったので、参加することにしたんです。

そこで、案件選定や営業の仕方、クライアントさんとのコミュニケーション方法を学んだことで、スクール在籍中に旅行メディアや薬剤系メディアなどのお仕事を獲得することができました。

あのときに学んだ、営業方法や提案文の書き方が今にも繋がっています。

Q7. 独立するとき、
不安はなかったの?

もちろん、不安はありました!

キャリアスクール卒業後は、ライティングでの悩みはもちろん、フリーランスとしての悩みも誰にも相談できないような状態でした。

それもあって、卒業後も1ヶ月ほどはキャリアスクールの運営するシェアハウスで暮らしながら、ライターをされている管理人さんにお世話になっていましたね。

また、あるとき、キャリアスクールの講師の方の「まいまいは海外移住や旅をしながら働くを目的にしてフリーランスに踏み出したんだから、一度海外で仕事をしてみたら」という言葉をきっかけに「それもアリだな!」と素直に実行してみることにしました。

タイのチェンマイに渡り、カフェで作業してみたり、自分と同じようなノマドの人と話してみたりと、とにかく行動しつづけることで不安を解消していきました。

Q8. 医療ライターの講師を
はじめたきっかけは?

お世話になったキャリアスクールで講師をやってみないかと、声をかけて頂いたのがきっかけです。

受講生の頃から、講師もやってみたいなとは思っていたのですが、家庭教師のような教える側の経験もなく、人前に立つと上がってしまうので、漠然とした不安はありました。

不安を抱えた中で講師をやってみて、スクール終了時には受講生からお礼の言葉やありがとうの気持ちをたくさんもらい、「人に感謝されながら仕事ができるのは、すごく好きな働き方だな」と、今後も続けていきたいと思うようになりました。

また、医療現場で働いたときに、人間関係やストレスで「もう薬剤師には戻らない」と仕事を辞める先輩を見てきました。また、「家事育児をしながら在宅で働けたら」と考えるお母さんの話も聞いたことがありました。

そんな方や、過去の自分のように「新しい一歩を踏み出したいけど、踏み出し方が分からない」医療従事者の力になれることがしたいなと思い、「医療ライター」に絞ったスキル提供をしていけたらと思っています。

フリーランスになってみて

フリーランス_医療・取材ライター4

Q9. フリーランスになってみて
よかったことは?

自分の暮らしを中心にして毎日を過ごせることだと思います。

薬剤師のような医療資格の臨床現場だと、もともとある組織に自分が参加して、医療職としての業務を行うのですが、命に関わる現場なので気も張りますし、少人数で自分に合わない環境だとつらいこともあるかもしれません。

フリーランスだと、オンラインで完結できる仕事であれば、場所や人間関係にとらわれすぎずに働くことができます。

以前私が派遣薬剤師をやっていたとき、夏は北海道、冬は沖縄で働く、という生活を送っていたのですが、Webフリーランスであればそんな暮らし方も不可能ではないのかなと思います。

Q10. フリーランスになってから
大変なことは?

Webライターのお仕事は、複数のクライアントさんとお仕事を続けることが多いのですが、いつまでにこの業務を終わらせて、こっちの納期はいつまでで…と、マルチタスクで動くのが大変です。

あとは、ずっと椅子に座ってパソコンと向き合う仕事なので、どうしても体力がなくなったり、運動不足になったりします。フリーランスにとっては、日々身体のメンテナンスをすることも大切なことですね。

フリーランスになった今

フリーランス_医療・取材ライター5

Q11. 現在の具体的な
仕事内容は?

個人で行っているのは、医療系の記事作成・編集と、薬局経営者さんにお話を伺うような取材記事の執筆、メディアや講座の運営です。

オンライン講座では、医療資格を持っているうえで「働き方を変えたい」「自分の経験を記事にして誰かの役に立ちたい」と考えている過去の自分のような人に向けて、医療系に特化したライティングスクールを運営しています。

悩んでいた過去の自分にとって、嬉しいことはなんだろう? と考えながら、未経験だけどチャレンジしてみたいという医療職の方の背中を押せるような講座を企画しています。

受講生さんは、私自身が薬剤師だということもあり、薬剤師さんが一番多いですが、他にも看護師さんや、臨床検査技師さん、歯医者さんなども受講してくださっています。

また、2022年5月から講座卒業生さんたちと「医療ライターの交流ラボ」というコミュニティもスタートします。講座卒業生さん以外にも、いろいろな医療ライターさんたちと楽しく交流できれば嬉しいなと思います。

フリーランス_医療・取材ライター6

Q12. 今後フリーランスとして
どうなっていきたい?

育児中のフリーランスの先輩方から、子育てをしながらだと、1日2時間ほどしか働く時間を確保できないと聞きました。

私も、子育てをするときや自分の体調が悪くなったときにもしっかり収入を確保できる状態でありたいと思っています。

あとは、今のパートナーがいずれWebエンジニアとしてアメリカの企業で働きたいという夢を持っている方なので、海外移住をしても楽しく暮らせるように、働き方を柔軟に考え続けていきたいです。

目指す人へのメッセージ

メッセージの画像

迷っているのであれば、まずは挑戦してみてほしいです!

とりあえずやってみないと、フリーランスの働き方が自分に向いているのかもわからないと思うので。

あとは、「家族との時間を大事にしたいからフリーランスになりたい」「旅をしながら働きたい」「正社員の時よりも数倍稼ぎたい!」など、人によって目指すゴールもバックグラウンドも全然違うのではと思います。

活躍している他の人と比べて落ち込んでしまうのではなくて、自分なりの目標を持って、自分の道をしっかり歩んでいってほしいなと思います!

いかがだったでしょうか?
以上、のまいまいさんの生き方・働き方のストーリーでした!
あなたの今日もtoiroな1日にしませんか?