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「エディトリアルデザイナー」とは
Q1. どんな仕事内容なの?
エディトリアルデザインは、文章や画像などの素材をもとに誌面を作りあげる仕事です。誌面といっても、パンフレットやリーフレット、フライヤー、DM、名刺、雑誌などさまざま。これらすべてをまっさらな状態から、配置構成やデザインに至るまで一貫して担当しています。
読者に伝えたいメッセージや誌面のイメージなどのコンセプトは、クライアントと一緒に考えたり、こちらに任せてもらえたりする場合もありますね。
Q2. 実際の報酬はどのくらい?
人によって異なりますが、私の場合だと、雑誌1ページあたりA4サイズで15,000円〜20,000円と料金設定をしています。表紙つき4ページのパンフレットだと、60,000円〜80,000円くらいですね。
料金設定については、かなり試行錯誤してきました。フリーランスになりたてのころは時給で設定していて。知り合いのデザイナーさんと話すなかで「デザイン費用を時給換算するのは間違っているかも」と感じ、成果物に対する報酬形式に変更したんです。はじめは相場がわからず料金を安くしていたので、デザイナー仲間に意見をもらいながら少しずつ価格を修正していきました。
「エディトリアルデザイナー」aoiさんの働き方
Q3. エディトリアルデザインで、
どんなお仕事をしてきたの?
通販商品と一緒に送るチラシやカタログ、リーフレット、梱包資材など、紙物全般の販促ツールのデザインを行なってきました。化粧品通販の会社やベビーアパレル会社、オーガニックハーブティーの販売会社など、さまざまな業界のお客さまとお仕事をさせていただきましたね。
Q4. 強く印象に残っている仕事は?
学校の先生や教育に関する特集雑誌のデザインを、表紙から中身まですべて手がけたことです。
「教育」「先生」という言葉は、かしこまったイメージを持たれがち。クライアントからは「硬くなく、カジュアルに読める雑誌にしたい」と要望があったため、カルチャー誌のようなデザインにしてみました。
雑誌全体の構成やデザインを任せてもらったため、自分のデザインを信頼してもらっていた感覚も印象に残っていますね。最初は不安でしたが、デザインの幅が大きく広がる仕事になりました。
Q5. その仕事で
工夫していたことは?
原稿や写真から感じる先生方の印象と反対側のエッセンスを、デザインのスパイスとして表現に添えたことです。たとえば、優しい雰囲気の先生であれば表現に「クールな印象」を、熱い感じの先生であれば「やわらかい印象」を足す。そうすることで、先生一人ひとりの奥深さを表現できると考えたんです。
奥深さを表現するのに役立ったのは、日々吸収しているデザインのアイデアたち。図書館で絵本を読んだり美術館で作品を鑑賞したりして「このデザイン、いいな」と思ったものを、頭の中に溜めているんです。
先生の雑誌を制作したときも、ストックしていたデザインを引き出しからそっと取り出す感覚で使い、アレンジして誌面に落としこみました。
Q6. エディトリアルデザインの
面白みは?
「editorial(エディトリアル)」とは、「編集の〜」という意味。つまり、エディトリアルデザイナーは編集スキルも求められる仕事です。読者の興味を引いて印象に残せるように、情報をデザイン視点で編集するところに面白みを感じます。
また、自分の思い描くイメージをそのままデザインに反映できることも魅力の1つです。というのも、以前Webデザイナーとして働いていたころ、私はデザインのみを担当し、コーディングはコーダーさんが担当していました。なので、デザインをするときはコーダーさんのことをつねに考えていたんです。
「ここにスペースを入れたいけど、コーディングに手間をかけてしまうな…」「この表現だと工数が増えてしまうから削ぎ落とそう」など、自分だけでデザイン作業を完結できないがゆえに、デザインよりも仕事仲間の負担を意識しがちでした。
一方、エディトリアルデザインはコーディングが不要。もちろんインク指示や印刷データ作成など、紙物特有のルールはありますが、デザインに関わる作業はまるごと自分で担当できています。そのため、以前に比べてより良いデザインを考えることに集中できているんです。どちらのデザインも経験したからこそ感じる面白さかもしれないですね。
Q7. エディトリアルデザインの
大変なところは?
アウトプットとインプットをとにかく繰り返す必要があるところですね。過去に64ページ分のデザインを担当したときは、4ページごとにデザインのテイストを変えていました。そのため、今までインプットしてきたデザインの引き出しの中身を使い果たし、納品後は空っぽ状態に。
でも、3ヶ月後に同じボリュームのデザイン制作が決まっていたため、ふたたびインプットして引き出しの中身を補充しました。大変ではありますが、インプットとアウトプットを繰り返すことで成長できていると感じます。
Q8. どうやって仕事を
獲得しているの?
営業はせず、人との繋がりで依頼を受けることがほとんどです。既存のクライアントから新たなクライアントを紹介していただくことが多いですね。他には、以前の職場の同僚が独立したときに、デザインを依頼してくれたことがあります。
自分の真面目な性格が、フリーランスとして信頼関係を築くのに役立っていると思っています。当たり前のことですが、期限内の納品や丁寧なレスポンスなど、一つひとつを徹底していて。以前は真面目すぎる自分の性格が好きではありませんでしたが、仕事においてはその真面目さが強みとなって、仕事の広がりに繋がっているのかもしれません。
「エディトリアルデザイナー」を目指す人へ
Q9. どうしたらエディトリアル
デザイナーになれるか教えて!
まずは自分の文章や有名な詩でもいいので、“文字から連想される世界観”をデザインで表現してみるといいと思います。ある程度数が集まったら、作品集にして出版社に送って営業をかけるのも1つの手段です。
また販促デザインやリーフレットは、デザインを必要とする人と繋がることが大切なので、デザイナーの募集を探して応募してみましょう。ランサーズなどのコンペ形式の募集もおすすめです。必要な素材が提供された状態で制作を始められることが多く、他の人の作品を見られる場合は学びもあると思います。
エディトリアルデザイナーを目指す過程では、自分なりの楽しさを見つけることもすごく大事だと思います。自分が楽しいと思えることのほうが、続けやすいですからね!
Q10. エディトリアルデザイナーに
必要なスキルは?
機能的なスキルと、感性が必要だと考えています。まず機能的なスキルとして挙げられるのが、情報整理能力と提案力。
リーフレットで商品を1つ紹介するにしても、伝える情報の取捨選択や読みやすさに加えて、もっとも伝わる配置構成などの情報整理が必要です。クライアントが構成を作成したうえで依頼してくれることもあります。でも、その構成のまま作るのではなく、情報を整理して「こうしたらもっとわかりやすいかも」と提案するスキルも必要です。
あとはスキルではありませんが、幅広くいろんなデザインに触れて、ときめく感性を磨くことも大事だと感じています。それは自分が持っている知識や経験が意外なところでデザインに生きることがあるから。デザインに活かすためにも、いろんなことに興味を持って吸収することを心がけています。
Q11. おすすめの本やサイトは?
本に関しては、投資した金額以上のリターンがあると思っているので、高くても買うようにしています。おすすめの本をパターン別に紹介しますね。
アイディアが欲しいときは、『ページもの冊子・雑誌のパーツ別デザインコレクション』をよく読みます。見出しや写真、文字などカテゴリーごとに分けられた作例が載っているのでデザイン作りの際、とても参考にしています。
メインビジュアルを作り込むときは、『アレンジ・オリジナル・組み方で差がつく! タイトル文字のデザイン』を活用していますね。
デザインにハマるイラストやテイストを検討するときには、『心おどるイラスト×伝わるデザイン』を読みます。
エディトリアルデザインに限らずデザイン初心者の方には、『けっきょく、よはく。 余白を活かしたデザインレイアウトの本』がおすすめです。作例と解説つきで、デザインの基礎を学べますよ。
メッセージ
エディトリアルデザインは、まっさらな状態から作品を作りあげていきます。そのため、「はじめはちゃんと作りあげられるかな」「いいものが作れるかな」という不安な思いがあるでしょう。でも、作っていくと楽しさが出てくるので、その気持ちを大事にしてほしいです。
楽しいと感じているときこそ、いい作品が作れると感じています!